<金口木舌>百年目


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 「ここで会ったが」に続く言葉がすぐに出てくるのは40代以上だろうか。ごくまれな好機のことで、運の尽きも指す「百年目」である。「百年」は比喩的に長い間も意味する
▼「百年に一人」とはめったに出ない才能。これを地で行く大リーグの大谷翔平選手だ。本塁打数トップで先発登板し、1921年のベーブ・ルース以来の快挙となった
▼3季ぶりの勝ち星も挙げた。肘の手術からのブランクである。ワールドシリーズを目指しトップ選手がせめぎ合う、まさに世界一のリーグにあって「二刀流」の夢を諦めることなく、うまず努力を続けた
▼「コロナの中での鍛錬の成果が表れてきた」との言葉を最近よく聞く。県内のスポーツの現場でのこと。大谷選手や五輪に挑むアスリートに力をもらうという選手もいた
▼東京五輪は国民の4割が中止を求め、再延期支持も3割いる。辞退や開催反対の表明を選手に求める声もある。一方、過去に重ね開催意義を訴える人も。1920年、スペイン風邪流行下でのアントワープ大会だ
▼100年を経た今、病禍の奇縁はあろうが、開催ありきは論外だ。辞退要求も筋違いである。めったにない国内開催に多くの意見が出ることは大切だ。競泳の池江璃花子選手は「中止の声は当然」と受け止め「やるなら全力、ないなら次へ頑張るだけ」と。矛先を向けるべきは選手ではない。