<金口木舌>この言葉あり


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 大リーグの名プレーヤー、ルー・ゲーリッグは筋力が次第に低下する筋萎縮性側索硬化症(ALS)に苦しんだ。連続試合出場記録は病気で絶たれ引退。2年後、37歳で世を去った
▼「私は世界で一番幸せな男」。引退スピーチでチームメートやファンに恵まれたと謝意を示した。重い病気を抱えた引き際である。感謝の詰まった言葉に聴衆は心打たれた
▼この人は病と戦う側に身を置くためアスリート人生を終えた。ラグビー日本代表で活躍したパナソニックの福岡堅樹選手だ。4月から順天堂大医学部に入学し、医師への道を歩き出していた
▼23日のトップリーグ最後の一戦でサントリーに勝利。この試合でも爆発的な加速でライン際を駆け上がってインゴールへ。トライゲッターとして有終の美を飾った
▼「患者さんとその人生に向き合える、心に寄り添えるドクターになれるよう努力を続ける」。世界に誇る日本のウイングとして大成し、なお新たなステージに挑む姿がまばゆい。同じくスポーツに関わる人の言葉とは思えないものもある
▼国際オリンピック委員会幹部らの発言だ。緊急事態宣言下での五輪実施も可能との考えを示し、バッハ会長は開催のため「犠牲を払わなければ」と発言したという。開催ありきと受け取られそうだ。気を張り続けている選手のモチベーションをそいでしまわないかが気掛かりだ。