<金口木舌>伝え続けることの大切さ


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 「この世界でナイルパーチは旅をする銀の鱗(うろこ)をなくした夜も」。県出身モデルで女優の知花くららさんの短歌だ。知花さんは国連の世界食糧計画(WFP)日本大使としてアフリカなどの貧困や食料不足の問題を伝えている
▼ナイルパーチは白身魚のフライなどに使われる代用魚だ。歌人の黒瀬珂瀾(からん)さんはこの歌を「自分の名前を呼ばれず、個々の人間として扱われない難民の人々の厳しい境遇を(代用魚に)重ねている」と評価した
▼アフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)で22日、ニーラゴンゴ山が噴火した。溶岩が住宅街を覆い、30人以上が死亡。5千人以上が家を失ったという。国連児童基金によると170人以上の子どもが行方不明になった
▼コンゴは天然資源が豊富でスマートフォンなどに使われるコバルトの主要産出国だ。ただ世界銀行によると1日1・9ドル(約200円)未満で暮らす貧困層が半数以上に及ぶ
▼知花さんは4年前、本紙の取材に「空腹で体が弱っていく人と出会うが、その感覚は想像できない」「完全な共感は難しい」と話している。ただ状況を具体的に話せば「目の色が変わり、興味を持っていただける」と地道に伝え続けることの大切さを強調した
▼海外の状況は十分に沖縄まで伝わらないことも多い。それでも一人一人がわがことと考えれば国際的な支援を広げる一歩になるはずだ。