<金口木舌>スポーツの音を聞く


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 プロ野球セ・パ交流戦の実況をテレビで見ていると、いつもより打撃音がよく聞こえてきた。逆にスタンドの応援は聞こえない。鈍感な当方は無観客試合だと気付くまでに数分かかった

▼静かな球場での熱戦はちょっと味気ないけれど、プロ野球のだいご味は増しているようにも感じた。いつもならかき消されるであろう選手の声まで聞こえてくる。コロナ禍の副産物と言うべきか
▼野球評論家の佐々木信也さんは、かねや太鼓などの鳴り物を使ったスタンドの応援に疑問を呈していた。野球本来の音が聞こえなくなるためだ。無観客試合の実況で、音の魅力を実感できた
▼今年の県高校総合体育大会は緊急事態宣言で全競技が無観客に切り替わった。寂しい思いをした選手もいただろう。気の毒だった。聖火リレーも同様だ。トーチを掲げるランナーの笑顔に救われるような気がした
▼本番の東京五輪の方は開催の可否が定まらない。やるべきかやめるべきかを論じる声は鳴り物のよう。特に政府の声が大きい。大切な声を聞き逃してはならない。基本に据えるべきは「命を守る」でありたい
▼陸上競技場や球場、体育館に満員の観客が戻ってくる日はいつのことだろう。それまでは競技が発する魅力的な音で会場を満たしてほしい。もちろん選手任せではいけない。命を守り、スポーツを愛する人々の支えも必要だ。