<金口木舌>認知のゆがみ


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 「燃えているのか」「爆発する」。米軍のヘリが地響きのような異音を響かせ、高度を下げてきた時の恐怖感を津堅島に住む女性は語った。島の人々は不時着した機体の周りに駆けつけ、けが人がいないか確認した

▼降りてきた米兵にけががないか聞き、飲み物や懐中電灯を差し入れた人もいたという。不時着した畑は事故機の離陸後にも複数の足跡が残されたが、耕作する男性は「大きな被害が出なくてよかった」と話す。島を訪れて謝罪した米海兵隊のニール・オーウェンズ大佐は住民の気遣いに謝意も述べた
▼しかし米軍は不時着の原因を明らかにせず、県が求める同型機の飛行停止にも応じていない。島の人々の優しさを米軍はあだで返すつもりだろうか
▼2017年、新幹線のぞみが台車に亀裂を生じたまま3時間以上も運転を続けたことがあった。運輸安全委員会は調査報告書で、異常事態を過小評価する「正常性バイアス」があった可能性を指摘した
▼危険性の判断を職員の間で「相互に依存していた」という。重大事故を防ぐ意識改革をJR西日本に求めた。異常な事態を直視しないのは、在沖米軍基地の過密な運用や事件・事故に向き合わない日米両政府に通じる
▼都合のいい情報ばかりを取り入れ、その他は無視するのでは独り善がりになるばかりだ。日米両政府には認知のゆがみを正す責任がある。