<金口木舌>アートに触れる喜び


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 雨の日が続いている。今年は長梅雨だろうか。それに加えて先の見えないコロナ禍。さすがに気がめいる。そんな日々の中、アートに触れることで忘れかけていた心身の充足感がよみがえる

▼5月に那覇市民ギャラリーで開かれた写真展「末吉杜18~森に生く」は、那覇市の末吉公園の豊かな自然を捉えた作品が並んだ。写真家の小橋川共男さん率いる写真サークル「末吉杜18」の作品である
▼シリケンイモリ、ルリハコベ、ブラシノキ…。都会の公園に残る豊かな自然に目を見張った。雨上がり、植物の葉にしたたる雨粒は宝石のよう。ギャラリーからの帰り道、幸せな気持ちに浸った
▼コロナ禍で、昨年から今年にかけて美術館・画廊などは休館を余儀なくされた。中止になった展示会もある。最近は感染対策を施し、入場者を制限して展覧会を開く動きが出ている。アートを絶やしてはならないという使命感を感じる
▼表現者も発信方法に一工夫。美術団体「沖縄旺玄会」は会員の絵画作品を掲載した冊子を「紙上展」として発行した。砂川惠光会長は「アートを通して少しでも元気づけたり、癒やしたりすることができればと思う」と語る
▼芸術活動は「不要不急」とも見なされがちだが、苦しいからこそ心の栄養補給は欠かせない。渇いた心に潤いある風を呼び込んでみよう。ここかしこにすてきなギャラリーはある。