<金口木舌>引き際


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 ジャズビッグバンド「シャープス&フラッツ」のリーダー原信夫さんが亡くなった。94歳。58年間率いたバンドは2010年に解散。名手をそろえた絶頂期で、惜しまれつつ閉じた

▼解散に際し「結成以来一番いい音をしている今、ビッグバンドという形式から離れようと思う」とコメント。米ジャズフェスにも出演したパイオニアが自らのサウンドを最も美しい音色で残す引き際だった
▼第一人者の身の処し方は注目を集め、人の口に上る。この人も時代によってさまざまな評価を受けてきた。引退が発表されたプロ野球西武の松坂大輔投手だ
▼横浜高で甲子園春夏連覇を牽引(けんいん)し、プロ1年目からタイトルを獲得。大リーグではワールドシリーズで日本選手として初の勝利投手に。ワールド・ベースボール・クラシックで2大会連続のMVPと輝かしい経歴を持つ
▼「松坂世代」の言葉も生まれた。連覇した選抜と選手権には沖縄水産高が出場し、新垣渚さんがプロ入り。元阪神の藤川球児さんは平良海馬投手が更新するまで連続試合無失点記録の保持者だった。多くのプロが出た世代を象徴したのが松坂投手だ
▼けがに苦しんだ。古巣西武に戻っても登板機会はなく、期待と同時に批判も増えた。それでも再びのマウンドを目指して懸命にリハビリを続けた。野球に真摯(しんし)に向き合い続けた姿は多くの記憶に残り続ける。