<金口木舌>ゾウと温暖化


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 中国で野生のアジアゾウの群れが1年以上前から北上を続けている。自然保護区の環境が変化して餌が減ったのが原因ではないか、との見方もある

▼約500キロも旅をするゾウは、人間より温暖化の影響を感じているのかもしれない。地球の平均気温は昨年、観測史上最高となり、産業革命時に比べ1・2度上昇した。北極の氷が溶けたり、豪州や米国で山火事が発生したりした
▼日本はいつから梅雨になると、毎年のようにどこかで災害が起こるようになったのだろう。四季に雨期が加わり、まるで“五季”になったかのよう。各地で大雨の被害が出ている
▼沖縄も例外ではない。今年は過去4番目に長い梅雨となった。夏に見られる通り雨が、最近はゲリラ豪雨とも言える雨量で、大雨警報が出ることもある。異常気象が続けば将来、深刻な事態を招く
▼政府は2030年までに、温室効果ガスの排出を13年度比で46%の削減を目指す。水筒を持つ、食べきれずに捨てる「食品ロス」をなくす、省エネ家電を使うといった地道な取り組みと同時に、政治で社会の仕組みを変えていくことも大事だ
▼ゾウは1頭が群れから離れ、民間地に近づいたため当局が麻酔で捕獲した。自然保護区に戻されたという。残りは今も放浪を続ける。温暖化に手を打たなければ、いつか人間もゾウのようにさまよい始めるかもしれない。