<金口木舌>人間国宝の黄金言葉


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 琉球舞踊の習得は姿勢づくりから始まる。立って息を吸い込み、おなかがへこんだところに力を入れて腰を落とす。着物の腰周りの生地をつまみ上げるような感覚だ。「ネーチリイリレー(着物のあげを入れなさい)」は琉舞の指導に使われる

▼琉球舞踊の分野から初の人間国宝が2人誕生する。宮城幸子さんは受賞を受けて、師匠の故真境名佳子さんの教えを披露した。「シチャワタンカイ(おへその下に) ネーチリイリレー(着物のあげを入れなさい)」
▼踊りの土台は姿勢づくりから。そこから歩みが始まる。真境名さんの教訓を胸に宮城さんはしまくとぅばになじみのない世代に、師匠と同じ言葉で教えるよう心掛けている
▼同じく人間国宝に認定される志田房子さんは受賞の喜びを琉歌に託した。「真こと夢ここち思寄らんご沙汰生で果報ゆ肝に初心の一歩」。「初心の一歩を踏み出すという気持ちを詠んだ」という
▼志田さんは節目ごとに思いを琉歌に託してきた。しまくとぅばだからこそ、言い表せる心情があるのだろう。3歳で踊りを始め、戦後の焼け野原でも踊り続けた。師匠の玉城盛重さんを沖縄戦で失ったが、盛重さんの流れをくむ先達らに師事し技を磨いた
▼新たな人間国宝が伝えるしまくとぅばに沖縄の先人たちが受け継いできた物の見方や考え方、文化の豊かさを見る。言葉もまた沖縄の宝である。