<金口木舌>著名人相次ぐ告白に


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 テニス女子シングルスで東京五輪代表の大坂なおみ選手が「うつ」に悩まされてきたと告白した。俳優の深田恭子さんは適応障害と診断されたため休職すると発表した。最近の著名人による相次ぐ告白に多くの共感が寄せられた

▼精神疾患は、誰もがかかり得るというメッセージになったからだろう。国の統計によると5人に1人は精神疾患を発症する可能性がある。発症のピークを10代前半とする海外の調査もある
▼精神疾患に対する正しい知識が普及しているとは言い難い。差別や偏見を恐れ悩みを抱え込んでいる当事者は少なくないだろう。来春から使用される高校の保健体育の教科書に精神疾患の予防や対処方法の記述が盛り込まれることになった
▼近年、小中高生の自殺が増加傾向にある。精神疾患が要因の一つと考えられることから約40年ぶりに教科書への復活が決まった。病気に関する正しい知識の普及は、予防と早期治療につながる
▼一方、10代前半で発症しやすい傾向を踏まえ、当事者の親の会からは、小学校からの精神疾患についての教育と教員の研修を求める意見もある。子どもが不調に気づくことができるなら早い支援につながる
▼大坂選手や深田さんら著名人による精神疾患の公表を偏見の払拭(ふっしょく)につなげたい。心の病は誰にとっても無縁ではない。理解が進めば救われる人は増えるはずだ。