<金口木舌>生きた証

 毎年、慰霊の日に糸満市にある平和の礎を訪ねている。沖縄戦で犠牲になった曾祖父母の刻銘をなぞり花を手向ける。人柄や戦前の暮らしを想像すると安らかな気持ちになる

▼平和の礎の「追加刻銘板」には今年、新たに41人の氏名が刻まれた。県内の50代男性は家系図の制作中に、平和の礎に名前のない親戚に気付いた。他の親戚の証言を基に刻銘を申請し今年実現した。生きた証しを残したいという家族の思いを感じた
▼生きた証しを刻銘という形で残せない犠牲者もいる。相模原市の知的障害者施設「やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件から5年。亡くなった入所者19人のうち、慰霊碑に刻銘されたのは7人。12人は遺族が名前の公表を望まず見送られている
▼名前を巡っては事件発生直後、県警が「遺族からの強い要望」として非公表にした。障がい者の関係団体は、遺族が公表をためらう背景に障がい者や家族への差別、偏見があると指摘した
▼施設を利用していることに家族が負い目を感じている場合もあるという。公表しない理由はさまざまだろうが、差別・偏見が一因にあるなら課題は社会の側にもある
▼事件後、東京都内で開かれた追悼集会で、遺族が痛烈なメッセージを読み上げた。「この国は優生思想的な風潮が根強く、公表できない」。自分の中の差別心に気付くことが、共生社会の一歩になる。



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