<金口木舌>「まずい棒」で地域興し


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 「まずい棒」を身構えて食べてみたが、甘くておいしかった。不当表示を疑ったが、販売元によると「まずい」は味のことではなく、経営状況のことらしい

▼まずい棒を販売しているのは千葉県銚子市の銚子電気鉄道(銚電)。銚子から外川までの6・4キロを運行する同社は、1913年に設立され、かつて通勤や通学、物資輸送などで活躍した
▼だが、近年は利用者の減少などで幾度となく廃線の危機に直面するなど厳しい経営状況に陥った。同社を救ったのは路線を維持するために起死回生を狙って開発した「ぬれ煎餅」だ
▼「買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」という異例のお願い。老舗の鉄道会社の力になろうと、全国の鉄道ファンらが銚電の駅やオンラインショップでぬれ煎餅を買い求め、窮地を救った
▼まずい棒は2018年から販売開始し、シリーズ化している。その第8弾として沖縄県産のパイナップルの粉末を活用した「まずい棒 沖縄パイン味」が誕生した▼関係先の沖縄ツーリスト(OTS)と、OTSの取引企業、沖縄フルーツランド(名護市)とのコラボ商品。日本一のエンターテインメント鉄道を目指す銚電の柏木亮常務は「コロナ禍で観光は厳しいが、全国の人にこのまずい棒で沖縄を思い出してほしい」とする。逆境に挑む地方企業の団結はうまい結果を生むに違いない。