<金口木舌>夏を取り戻したい


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 家の周囲を散歩していたらセミの鳴き声が聞こえてきた。でも例年より鳴き声は小さく、遠くから聞こえてくる。不思議に思っていたところで、はたと気がついた。セミから遠のいているのは、こちらの方だ

▼コロナ禍で外出を控えている。セミの鳴き声を聞く機会や心の余裕をなくしていた。暦の上ではとっくに立秋を過ぎ、もうすぐ9月。夏の盛りを感じないまま秋が深まるような気配
▼エイサーのパーランクーの響きや地謡が弾く三線の音を久しく聞いていない。各地の青年団が練習を控えている。昨年に続き、全島エイサーまつりが中止となった。沖縄の夏の風物詩が消えたような気分だ
▼そう思っていたら旧盆ウンケーの夜、沖縄市の久保田青年会の地謡が集落を回ったと聞いた。ウークイでは胡屋青年会が軽トラックで音だけの道じゅねー。コロナに奪われた夏を取り戻す粋な試みだ。ご先祖さまも喜んだだろう
▼甲子園の球児も苦しんでいる。宮崎商と東北学院(宮城)がコロナ感染で試合を辞退した。宮崎商は13人の集団感染。東北学院は個別感染だが、選手が特定されることを危惧し、辞退を申し出た。何ともやりきれない
▼涙をのんだ球児たちの夏を取り戻すことができないだろうか。交流試合でもいい。もう一度、甲子園の舞台に立たせてあげたい。コロナ禍に耐えている若者たちの励みにもなる。