<金口木舌>善意こそ拡散を


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 「ああ南燈に火をともす」。名護高校の前身、三中の校歌の三番に、希望に満ちあふれる生徒の表情を思い浮かべる。同校に現存する三中の門を当時の生徒たちはどのような思いでくぐったのだろうか

▼名護高3年の女子生徒3人が先日、校内で実施したフードドライブ活動の食材約100点を名護市社会福祉協議会に寄付した。自分たちの不遇を嘆きたいはずだが「経済的に苦境に立たされている人たちのために」とポスターなどを作成した。創意工夫を凝らして生徒や教員らに協力を呼び掛けたという
▼2022年1月30日に開催予定だった「名護高校創立90周年記念事業」はコロナの影響で中止になった。だが、「知性、感性、個性」を校訓に掲げる同校の教育目標は脈々と受け継がれる
▼コロナ禍で学業や部活動が制限された生徒たち。それでも「フードロスをなくす取り組みにもつながる」と充実した表情を見せる
▼「ホームレスの命はどうでもいい」と発言した「メンタリスト」DaiGo(ダイゴ)さん。謝罪も含めて一連の動画を見たが、語り口と鋭い眼光に、心がざわついた
▼首相自ら「自助」を強調する社会だから、弱者を切り捨てるような発言が堂々と拡散されるのか。食料が詰まった段ボールを笑顔で運んだ名護高生らの「人助けの活動をつなげたい」という善意こそが拡散される社会であってほしい。