<金口木舌>月見と防災


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 絵本作家せなけいこさんの作品におばけが餅に化ける話がある。満月の夜、泣きじゃくる子をあやそうと餅になって気を引くおばけを描いた作品は「おつきみおばけ」。きょうは旧暦8月15日

▼月見で見上げる宇宙へと世界初の民間人旅行が成功した。宇宙船クルードラゴンに乗った4人が約3日間、地球の周回軌道を回った。1席当たり約5500万ドル(約60億円)との試算もある。誰もがとはいかないが、大きな一歩だろう
▼「小さな一歩だが、人類にとって大きな飛躍」との言葉が残る1969年のアポロ11号計画。月面着陸は7月だった。その年の中秋に人々はどう空を見上げたか。気になって過去の本紙をめくってみた
▼69年の十五夜は大型台風の襲来を受けていた。宮古、八重山で住宅全半壊を含む被害が出た。紙面には「中秋も暗黒の一夜」の見出しも。月見どころではなかったはずだ
▼宇宙旅行が実現した現代も災害を完全に防ぐことは不可能だ。予報技術は発達しても大自然を制御するなんてできない。備えで被害をいかに減らすか。1日の防災の日に始まり9月は防災月間
▼冒頭の絵本は、泣く子を放っておけないおばけの何気ない優しさを描いた。ちょっとした気配り、優しさは減災に役立つ。飛びやすい物を外に置かないこともその一つ。まだまだ台風シーズン。月をめでつつ、わが家の備えも確認してみたい。