<金口木舌>時には吠えて


社会
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 「政治家の演説はノー/繋(つな)がれた犬の鎖はおまえをしばくもの」。パンクバンド「INU」が1981年に発表した曲「つるつるの壺」の歌詞だ。作詞者はボーカルの町田町蔵さん。現在は作家として活動する町田康さんだ

▼飼い主に従順な犬のように、国の言うことに何でも従う人を軽蔑して「国家の犬」と言う場合がある。INUのバンド名は町田さんの犬好きに由来するそうだが、歌詞は国民性を批判している
▼公明党の山口那津男代表が、新型コロナ対策で18歳までを対象に10万円を給付すべきだとの考えを示した。一律給付の必要性は野党が以前から訴えていたが、与党の一角からも必要性が打ち出された
▼ただ国民が納めた税金の再分配は選挙にかかわらず必要な施策だ。コロナ禍ならなおさらだ。与野党ともに必要性を認めるのであれば、すぐに国会を開いて給付を決めるべきだ。憲法に基づく野党の国会召集要求に、菅内閣は応じていない。自民党は総裁選をしている場合ではないだろう
▼冒頭の曲は「毎日AM8時にあれをやりこれをやる顔が沢山(たくさん)/たどり着けないのは疲労の果てのおまえの家」と歌う。低賃金と消費の低迷、コロナ禍で疲れ果てた人々にも重なる
▼為政者が打ち出す施策を点検し、改善を求めることも重要だ。従順なだけでなく時には吠(ほ)え、かみつくこともできる国民でありたい。