<金口木舌>「あかじなー」とドタバタ劇


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 復帰前年の思い出がある。小遣いを手に小学校近くの駄菓子屋に通った。お菓子を買おうか、くじを引こうか。楽しい悩みだった。1セント硬貨を「あかじなー」とか「1銭みー」と言っていた世代は今、50代後半以上か

▼ニクソン米大統領が金とドルの交換停止を宣言したのは1971年8月。1ドル=360円の固定相場制から変動相場制に移行した。「ニクソン・ショック」で経済的損失を被る沖縄は混乱に陥った
▼円高が進み、ドルの価値が下落すると沖縄の資産は目減りする。住民にとってはたまらない。為替差損を補償するための作業となる「通貨確認」を実施したのは、50年前の10月9日のこと
▼銀行の通常業務は突然止まった。鉛筆の消しゴムをはんこ代わりにして紙幣にスタンプを押し、ドルの流通量を確認した。住民はドルを手に銀行へ押し掛けた。「あかじなー」で満足していた子どもは、大人たちが演じるドタバタ劇の意味を知らない
▼「そのてんやわんやする姿は、日本の国内で日本人がドルを使って生活する矛盾をそのままさらけだした姿でもあった」。当時の小欄は書いている。似た響きを私たちは今も聞いている
▼目下の有機フッ素化合物(PFAS)を巡る混乱がそうだ。基地との共存を強いられる矛盾、原因を究明せず、解決に動こうとしない日米両政府の無責任。これはたまらない。