<金口木舌>支援を行き届かせる


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 「少しやせたね。体を動かしている?」。中城村北上原のふれあい事業「ことぶき会」の担当者が語りかける。地域で暮らす85歳の女性は「階段を10回ぐらい上り下りしているよ」と答える。ことぶき会が9月、地域の高齢者を訪ねて弁当と飲み物を配った

▼同会は公民館で月1回、レクリエーションなどで高齢者の健康維持に取り組んできた。感染予防のため4月から休止していたが、利用者から「寂しい」との声があり、弁当配布から活動を再開した。村などと相談し、どのように活動できるか模索している
▼北中城村社会福祉協議会は炊き出し訓練を兼ね、地域の困窮世帯などに弁当を配った。同協議会のフードバンクには食材の寄贈があるが、そのまま配っても調理できない家庭もある。久高郁枝事務局長は「つながりが切れないよう支援を続ける」と話す
▼コロナ禍で社協などに生活資金の相談に訪れる人が増えている。背後には支援にたどり着けない困窮者も多いと言われる
▼政府は2月、孤独・孤立対策担当相を内閣に置いた。現代社会は経済的な貧困に加え「他者との関係性の貧困」があると指摘する識者もいる。課題は支援を行き届かせる方策だ
▼社協の担当者は「実際に困窮している人はもっと多いはずだ」と訴える。大切なのは、孤立しがちな人に支援の手が届くこと。困窮者を支える奮闘に光を当てたい。