<金口木舌>大切な財産を守るため


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 20代の頃、見知らぬ番号からかかってきた電話に出ると「有料サイトの登録料が未納だから支払え」と言われた。全く身に覚えのない請求で乱暴な言葉遣いだったので詐欺と気付いたが、違う手法だったらだまされたかもしれない

▼最近は特殊詐欺の手口が巧妙化する。実在の金融機関名を語って口座情報を聞き出すほか、新型コロナ給付金の支払いを装う事例もあるようだ。高齢者だけではなく若い世代も狙われている
▼警察庁によると、今年の特殊詐欺の被害額は8月時点で177億円超。さまざまな対策を講じても、いまだに膨大なお金が詐欺グループに奪われている。県内でも被害は出ている
▼NHKスペシャル取材班の著書「職業 振り込め詐欺」は特殊詐欺の実像を描く。詐欺被害に遭った人たちの絶望や悲しみは深く、自殺を図ったケースもあるという。著書では人命を奪いかねない特殊詐欺を「殺人と同じ」と断言する
▼金融機関やコンビニのスタッフが特殊詐欺を未然に防止したというニュースをよく目にする。詐欺のターゲットにされた当事者は困惑しているはずだ。周囲の人が異変に気付き声を掛けることが大きな力になる
▼17日は「貯蓄の日」。お金を大切にしようという思いを込め日銀が制定した。自身や家族の大切な財産を守るため特殊詐欺の手口を知る。そんな時間をつくってはどうだろう。