<金口木舌>実は最先端?本場の沖縄そば


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 南米の県人会を訪れると驚くのが言葉だ。移民した1世たちは、方言札から解放されたのを喜ぶかのようにうちなーぐちで会話していた

▼日本語は不得意だが方言なら分かるという2世も。アルゼンチンで1世たちがなじみの店で「セルベザ(スペイン語でビールの意味)、たーち(二つ)」と注文すると、きちんとジョッキが二つ出てきた
▼日本復帰によりさらに日本化が進んだ現在の沖縄では、継承運動などに参加しない限り日常的にしまくとぅばに触れる機会はない。言語や文化は絶えず変化するが、もしかすると遠方でこそ元来の形が残りやすいのかもしれない
▼県系人が約2千世帯住んでいるというブラジルのカンポ・グランデの文化遺産は「沖縄そば」。県系人の多くが鉄道敷設工事の重労働に従事し、原生林を切り開いた町で、名護市出身の勝連ひろしさんが古里の味を思い出しながら60年ほど前に再現したそばが現地の人にも愛されるようになった
▼醤油(しょうゆ)味のあっさりした黒いスープは、こってり味のそばに慣れた人からすると物足りないかもしれない。沖縄そば発展継承の会によると、元々の沖縄そばのルーツ「唐人そば」も醤油味
▼10月17日は沖縄そばの日。唐人そばから進化した沖縄ではソーキそばや三枚肉そばなどの老舗が多い。海外の県系人社会に最先端の本場の味を紹介するのもおもしろそうだ。