<金口木舌>「里親制度」に関心を


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 3歳の女の子だった。12年前、当時住んでいたアパートの近くで、朝から日暮れまで近所を散歩する子がいた。母子家庭で親は不在がちだった

▼「新しいお父さんができた」。ある日うれしそうに話し掛けてきた。安心したのもつかの間、しばらくすると「たたかれた」と暗い表情でつぶやいた。女児は県外に転居する祖母に引き取られそれっきりになったが、悲しそうな表情が忘れられない。何かできることはなかっただろうか
▼虐待事件が大きく報道された影響だろうか。通報件数は増加傾向にある。県内の児童相談所が2020年度に対応した児童虐待の件数は前年度より228件(14.2%)増加し、1835件(速報値)で過去最多となった
▼19年度時点の虐待や親との死別などで県内の乳児院や児童養護施設などで暮らす子どもは計512人。そのうち3人に1人に当たる176人が里親に委託された
▼「血はつながっていなくても家族になれる」。里親と里子の出会いとその後を追った本紙連載「家族になる」は、さまざまな理由で児童養護施設で暮らす子たちが里親に迎え入れられ、時に衝突しながら「安心」を得るまでの実話がつづられている
▼貧困や虐待などにあえぐ子たちを見て見ぬふりをすることはできない。里親制度を含め、全ての子どもたちが安心して過ごせる環境づくりに関心が高まることに期待したい。