<金口木舌>官製の「車座対話」


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 車座になってやることと言えば軽食を食べながら気楽なおしゃべり、あるいは缶ビール片手に飲み会か。子どもたちならレクリエーション。車座なら楽しい会話が弾みそう

▼車座風の演出で閣僚が民の声を聞くというのはニュースのねたにはなる。岸田内閣は「車座対話」の開催に熱を入れている。岸田文雄首相が掲げる「聞く力」の本領発揮か。既に10回以上も開いている
▼松野博一官房長官を囲んだ対話が宜野湾市で開かれたのは6日のこと。参加者は市役所が用意した文面に沿って発言したというから談論風発というわけにはいかない。シナリオ付きの官製車座で松野長官は何を感じたか
▼車座の試みは岸田内閣の新機軸というわけではない。安倍政権でも「車座ふるさとトーク」を全国で開いた。大臣と国民の対話が政策に反映できたのなら意味はある。話題づくりで終わってはいないか
▼宮本常一さんの名著「忘れられた日本人」で描かれた「寄りあい」を思い起こす。住民が粘り強く話し合い、物事を決めていく。話に花が咲き、難しい問題も数日で決着したという。演出やシナリオは必要あるまい
▼辺野古新基地問題で車座の対話をやってみてはどうだろう。玉城デニー知事や関連市町村の首長も加えたい。日米両政府だけの車座とは趣も変わってこよう。聞き上手が自慢という岸田首相にご一考いただきたい。