<金口木舌>「男らしさ」の呪縛


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 社会学者・田中俊之さんの著書「男子が10代のうちに考えておきたいこと」は、当たり前とされる性別役割を見直すヒントになる。男子は涙を見せるなと教えられ、家庭の「大黒柱」になるよう高学歴を期待されやすい

▼「男らしさ」の押し付けは子どもたちを窮屈にさせていないか、という田中さんの問いは一考に値する。「男らしさ」は、学校生活でも求められることがある▼男女別名簿や行事での順位はたいていは男子が先で女子は後。男子がリード役という感覚が当たり前のようになる。制服も選択制が広がりつつあるが、男女別で定められた服装が性による区別を意識させる
▼内閣府が性別による無意識の思い込みを調べた調査では、男性の方が「男らしさ」という性別役割の意識をより強く持っていることが明らかになった。「男らしさ」の呪縛が、人によっては生きづらさにつながることもある
▼本紙が「ジェンダー平等」をテーマに開いたオンライン企画で男性参加者が悩みを吐露した。ある人は社会人になると結婚し、子どもを持つことが前提とされる風潮に疑問を示した。男性の育休取得の難しさを挙げる人もいた
▼男女の問題はコインのように表裏一体といわれる。男性が仕事中心で、女性に家事・育児が偏ると社会進出の壁になる。理想は性別にとらわれず「自分らしく」生きられる社会の実現だ。