<金口木舌>キジムナーとブナガヤの嘆き


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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)が「キジムナーとブナガヤは別種」なる風変わりなニュースリリースを出した。どちらも古木に宿る赤い毛の精霊のことだが、こちらは新種ハゼの話

▼OISTとフィリピンの大学の共同研究チームが発見した3種の新種ハゼのうち本島北部の河川で見つかった2種に「キジムナーボウズハゼ」「ブナガヤボウズハゼ」と名付けた。名前の由来は特有の赤い模様
▼思い出すのが山城善光さんのこと。社会運動家で立法院議員を務めた。晩年はブナガヤ研究に打ち込んだ。経営する那覇市の飲食店にはブナガヤの人形が展示されていた
▼山城さんは本気だった。出身地の大宜味村喜如嘉を調査し「ブナガヤ実在証言集」を出した。序文を寄せたのは作家の船越義彰さん。山之口貘賞受賞作「きじむなあ物語」で記す。「ぼくは、きじむなあは存在すると信じている」
▼船越さんが描く「きじむなあ」は沖縄戦の時、やんばるへ疎開した。山城さんが信じるブナガヤたちは基地のない大宜味村の一角で生き延びている。芭蕉布の里はブナガヤの里でもある
▼やんばるの山を駆け回る精霊を想像するのは楽しいが、住み心地はどうだろう。世界自然遺産登録が実現したのに、約5年前に返された北部訓練場跡には米軍の遺留品がごろごろ。空では米軍機の騒音。精霊たちも嘆いていよう。