<金口木舌>カチャーシーにも形がある


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 空手の経験がなく三線も演奏できない。多くの人がイメージする「沖縄らしさ」と遠いところで暮らしている。一度だけ褒められたことがあるのはカチャーシーだ

▼海外の客人をもてなす宴席で「唐船ドーイ」が始まった。皆が座ったままリズムを取る中、うながされて立ち上がり、踊った。40以上も年の離れた先輩は「上手じゃないか」と言ったが、続いた言葉は「形がないから誰にでも踊れるけどね」。20代だった私への期待値が低かったのだろう
▼一方でカチャーシーに「形はある」と訴えるのが普天満宮の新垣義夫宮司だ。宜野湾市の飛衣羽衣カチャーシー大会の前運営委員長だ。手をこねる動きで喜びを表現するなど、基本的な四つの所作を創作カチャーシーにも取り入れるよう呼び掛ける
▼「海外の人の場合、全くの自由だと故郷のダンスをやるだけになってしまう」と新垣さん。宜野湾はごろも祭りで多くの人に愛される大会になり表面化した課題だろう
▼30周年を迎えた大会の記念誌が発行された。歴代運営委員長らが参加した座談会も掲載されている。開始当初、大会を軌道に乗せようと地域や行政、経済界が一丸となり支えたことなどを振り返っている
▼人をつなぎ、地域を盛り上げてきた大会は2年連続で中止された。コロナ禍を克服した喜びの「総踊り」が見られる日を県民が待ち望んでいる。