<金口木舌>憧れの故郷はいま


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 岡晴夫さんの「憧れのハワイ航路」からは旅に出る船客の高揚感がにじむ。かつて沖縄から海を渡った先人たちの胸中も同じだったか。もしくはまだ見ぬ地への不安が勝ったか

▼1899年12月5日、沖縄最初の移民団がハワイに向け出発した。オアフ島のサトウキビ畑で働き、そこで得た資金を元手に、さまざまな事業を展開する県出身者もいたようだ
▼当時、海外から沖縄へ送金を続けて困窮する県民を支えたという。地上戦で焦土と化した沖縄にハワイから豚が送られたのは有名な話。世界の県系人は常に故郷を思っていた
▼今や世界に約42万人の県系人がいると言われ、南米や欧州など世界中にネットワークが広がる。移民の子孫が自らのルーツを求めて沖縄に来ることもある。122年前に「ウチナーンチュ」の誇りを胸にハワイの土を踏んだ先人の思いは現代に引き継がれる
▼世界の県系人は文化やビジネスなど、さまざまな分野で連携し深い絆で結ばれる。世界のウチナーンチュとのつながりを一層強めて沖縄の未来を切り開きたい。