<金口木舌>地域史を語り継ぐ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 うるま市与那城屋慶名から海中道路を渡ると平安座島がある。石油備蓄基地があることで知られるが、かつては海運業や漁業で栄えた。元与那城村長の奥田良正光さん(92)は「戦前はやんばる船の交易拠点だった」と語る

▼船は建設資材やまきを本島各地へ運び生活用品と交換した。加えて出稼ぎや海外移民からの送金が島を支えた。人口は3千人に迫り、教育者も多く輩出した。終戦後は米軍が宮城島、伊計島の住民を集めて「平安座市」を設置した
▼地域の歴史は市町村史や字史に記録されている。奥田良さんはさらに個人史の重要性も指摘する。個人の功績だけでなく地域のかつての生活が記されていることがあるからだ
▼同市川崎の住宅地に米軍機が墜落した事故から60年。川崎小学校で事故を語り継ぐ活動が始まった。児童らが「継承者」として主体的に動くという。川崎自治会を中心に証言集の編集が進んだことも契機となった
▼地域の数だけ世替わりの歴史がある。多様な地域史を掘り起こし、後世に残す機運が各地で高まることを願う。