<金口木舌>アートとジェンダー


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 県内美術界の重鎮、画家の中島イソ子さんは、コロナ禍でも年1回の展示会を続け、今月上旬に那覇市で2人展を開いた。80歳を超え創作意欲は尽きない

▼後進の女性に「表現を続けてほしい」と熱望しているからだ。現在、沖縄女流美術家協会の会長。協会は1977年に結成され、グループ展は称賛も中傷も受けた。男性から「模合の集まりか」と揶揄されたことも。今なお女性差別は残っているという
▼差別の根っこは教育の場にある。美術系大学で学生の7割を女性が占める一方で、教員の8割は男性と、男女比に偏りがあることが分かった。「表現の現場調査団」が公表した
▼調査に協力した評論家の荻上チキさんは、指導・評価する側に男性が多いとして、ハラスメントの温床になっていると分析。女性が評価されにくい構造があり(教育の場から)「振り落とされる」と指摘する
▼美大卒業後の女性は表現活動の出発点で不利になりやすい。結果、表現の多様性が失われることにならないだろうか。作品を鑑賞する側にとっても損失は大きい。