＜金口木舌＞Aサインと新型コロナ

　年末、老舗ステーキ店を訪れたら、店内に「Ａサイン」の認証が掲げられていた。復帰前、飲食店や風俗店を中心に、米軍から衛生上問題なしと認められた店に与えられた

▼当時、認証を得るためには立地、広さ、建物はコンクリート製など、さまざまな条件があった。食中毒や感染症などが広まってしまっては、兵力を維持できない。米兵には、認められた店以外への出入りを禁止した
▼兵士の公衆衛生に徹底して厳しかった米軍が今、ずさんな感染対策で新型コロナウイルスの拡散原因になっている。日米両政府はようやく10日に基地からの外出を禁止した
▼米軍関係者にとってのかつての“Ａサイン”は、今や基地内だろう。立地よし、広さよし、建築費用は日本政府持ち。Ａサイン取得のため沖縄の人たちは借金して改装工事をしたが、その必要もない
▼おまけに日本政府は、沖縄県のように「抗議」や「要請」といった厳しいことは言わない。自由にさせてくれる。感染症対策とは言わず、今後は基地の中だけで暮らすことにしてはどうだろうか。