<金口木舌>生年祝いとうつぐみの心


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 五穀豊穣(ほうじょう)を願い、島が沸く―。毎年、旧暦9月の庚寅、辛卯の2日間を中心に伝統芸能を神々に奉納する竹富島の種子取祭は島出身者の生年祝いの場にもなってきた

▼しかし一昨年、昨年と2年続けて新型コロナウイルスの影響で中止に。竹富島出身の丑年生まれと2世らでつくる「竹富モーモー会」は、せめて形に残そうと昨年秋、記念誌を発行した
▼それぞれの寄稿では戦後の貧しい時代もうつぐみ(助け合い)で生きてきたことを振り返る。文化や営みの豊かさを感じとれる
▼八重山の先人は戦を回避してきたようだ。遺跡からは武器らしい武器の遺物は出ていない。八重山郷土史家の大田静男さんは「戦争をして人が死んだり傷つくと、島の生活が危うくなる。共同体が崩壊することをよく知っていた」と著書「夕凪(ゆーどぅりぃ)の島」で記す
▼しかし国の体制に組み込まれ、先の戦争では飢餓やマラリアで大勢が命を落とした。民を虐げる国の過ちを繰り返してはならない。今、この地域で対立を深める国々に必要なのは、うつぐみの心、ではないだろうか。