<金口木舌>理不尽な暴力の連鎖絶て


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 「精力善用」「自他共栄」。講道館柔道の創始者、嘉納治五郎氏の提唱した精神について、高校時代の恩師は熱く語った。「武道を修めるのは暴力を認めることではない。理不尽な暴力を止めるためだ」と

▼柔道愛好家は世界中に広がる。競技としての魅力にとどまらず、教育的な側面が高く評価されている証しと言える
▼ロシアのプーチン大統領も愛好者として有名だ。2000年の沖縄サミットでは、少年柔道大会で中学生に投げられて見せた
▼そのプーチン大統領の判断に、世界の注目が集まる。21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を一方的に承認した。ウクライナ周辺にロシア軍が展開され、戦争の危機感が高まる。国家の間で翻弄される住民の姿は、沖縄とも重なる
▼昨年、ウクライナ側が合意をほごにしようとしたことが危機の発端という指摘もある。NATOの東方拡大を防ぐ思惑もある。だが、戦火に巻き込まれるのは住民だ。振り上げた拳を下ろすことは恥ではない。理不尽な暴力の連鎖を止める姿勢こそ示してほしい