<金口木舌>金の魔力は恐ろしい


社会
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 「結論から言うと認められない。悪いことは言わないから、およしになった方がいい」。8年前のことだが、異例の忠告をする裁判官のあきれた表情を良く覚えている

▼中古の機材の中から、他人の1千万円以上の預金証書が出てきた。購入商品に入っていたのだから自分のものだ、という主張の本人訴訟だった。かなり無理筋だと感じたが、裁判官も同じだったようだ。警察か店に届けるべきだと指摘した
▼万一証書の所有権が認められても、預金そのものは自分のものにはならないだろうにと思ったが、人は予想外に大金が手に入るかもしれないと思うと判断が狂うのだろう。山口県の阿武町で起こった公金の誤給付問題を見て、改めてそう感じた
▼犯罪になることぐらい分かるはずなのに自分のものではないお金を使ってしまう思考は理解しがたいが、それも大金の持つ魔力なのかもしれない
▼発端は行政の重大な過失だ。二度とミスが起こらないように全国の自治体で再発防止策を共有してほしい。金の魔力による悲劇を生まないために。