<金口木舌>歴史に思いをはせて


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 SF小説「星を継ぐもの」は人類が宇宙開発を進める未来が舞台。月面で宇宙服を着た男性の遺体が見つかったことから物語が展開する

▼男性の死亡時期は5万年前で、体の構造は人類と同じ。男性はどこから来た何者なのか。生物学や進化論などの視点から謎に迫る様子はリアリティーがあり胸が高鳴った
▼南城市では古墓群から西欧系の人骨が見つかった。グスク時代後期から琉球王朝前期のものという。沖縄に来た理由などの解明はこれからだが、地域に深く溶け込み多様な社会を形成していた可能性がある
▼かつて沖縄は海外交易で発展した。勝連城跡ではローマ帝国やオスマン帝国のものとみられるコインが出土した。当時の人たちは異文化を受け入れ共生する寛容さがあったのだろう。ユイマールやチャンプルーなど沖縄の文化は現代も受け継がれる
▼先人の暮らしを探る作業はロマンにあふれる。私たちのルーツを知ることで、未来への道しるべに気付くこともあるだろう。慌ただしい日々でも時には歴史に思いをはせるのも悪くない。