<金口木舌>大日本帝国への「復帰」?


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 がれきが積もる山頂、兵士が数人がかりで大きな旗を立てている。星条旗ではなく日の丸だ。米国の写真家ジョー・ローゼンタールの「硫黄島の星条旗」をもとに画家の故・真喜志勉さんが1972年に発表したシルクスクリーン作品「大日本帝国復帰記念」だ

▼県立博物館・美術館で20日に始まった復帰50年の特別展「フッキ クオリア―『復帰』と沖縄美術」で展示されている。そばには東条英機元首相の顔も並ぶ
▼72年の本紙に真喜志さんは「自衛隊配備問題一つとっても皆マヒして驚きもしない。日常性から離れてもう一度驚いてもらいたい」と述べている。作品には賛否両論があったようだ
▼復帰から半世紀を経ても米軍基地だらけの沖縄本島。加えて先島に自衛隊基地の建設が進む。ロシアによるウクライナ侵攻を受け「台湾有事」が取り沙汰されている
▼72年の展示会を前に真喜志さんは赤い紙を配って歩いた。召集令状を模した案内状だった。沖縄を再び戦場にするための復帰だったのか。時を超えて真喜志さんの声が聞こえるようだ。