「まどうてくれ(元に戻して、償って)という思いを封印した」。2016年にオバマ米大統領が広島を訪問した際、被爆者の一人が語っていた。原爆投下の責任を認め、謝罪してほしい。戦後ずっと抱えてきた思いをのみ込んで大統領を歓迎していた
▼当時外相だった地元選出の岸田文雄氏は「(核廃絶の)スタートにしたい」と強調した。ただ原爆投下の責任や謝罪に関する見解は述べなかった
▼岸田氏は1日、核拡散防止条約の再検討会議で日本の首相として初めて演説した。しかし6月の核兵器禁止条約第1回締約国会議に政府はオブザーバー参加を見送っている
▼広島市上空で米軍機の低空飛行がたびたび目撃される。中国山地を横断して設定された訓練空域を外れ、騒音をまき散らす。戦争の惨禍に加え基地被害でも沖縄と共通する
▼ウクライナ侵攻、台湾有事、核共有。「米軍の存在が日本を危機に陥れている。再び戦争が起こりかねない」「政府は平和への願いを受け止めて」。6年前の被爆者の言葉は沖縄戦体験者の思いに重なる。