<金口木舌>同盟深化がはらむ危うさ


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 作家今野敏さんの小説「キンモクセイ」は日米同盟の危うい内実に迫る。1952年の独立がまがいもので米軍が今も日本統治に関与する実態を伝える

▼小説に登場するのが日米合同委員会だ。日米地位協定に基づき刑事事件で米軍関係者の身柄引き渡しなどの協議機関として知られる半面、米軍運用で施設・区域の提供、返還などを調整する
▼その合意事項は今も現実に量産され、例えば自衛隊施設の使用のほか、県内では辺野古の新基地建設に伴う河川の水路変更などがあった。民事の物権にも実権が及ぶゆえに危うさをはらむ
▼合同委のメンバーは日本側6人が文民なのに対し米側は在日米大使館の公使1人を除き5人が米軍幹部で占める。協議が“軍事優先”の論理で進んでもおかしくない
▼「キンモクセイ」にこんな台詞がある。「本当に恐ろしいことってのはな、知らないうちに進行するんだよ」。有事法制も整備が進んだ。軍事同盟の深化に前のめりなあまり偶発的な紛争に巻き込まれかねない。いびつな同盟を再考する時だろう。