<金口木舌>つなぐ豚の絆


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 74年前、戦争で焦土と化した故郷の復興を願い、ハワイの県系人が贈った550頭の豚が沖縄に届いた。豚を運ぶ船に立ちはだかったのは、3度の嵐と戦争の名残で太平洋中にまかれていた機雷。命懸けの航海だった

▼豚を運んだ県系人勇士の1人である上江洲易男さんの息子、上江洲ダリルさん(69)が世界のウチナーンチュ大会に合わせて来沖した。当時豚を受け取ったうるま市の高宮城善松さんの息子、宏さん(62)と交流した
▼宏さんは善松さんから養豚農家を引き継いだ。100歳近くまで生きたという善松さん、宏さんともに、親子2代で農林水産大臣賞も受賞した
▼この日、食卓にはてびちや中味汁、豚しゃぶ、豚丸焼きがずらり。困窮を極めた沖縄に贈られた豚は養豚業を興し、現在の食卓を彩る
▼過去の美談を語り継ぐだけでなく、その関係を更新し続け、ウチナーンチュの絆は今も固く結ばれている。ウチナーンチュ同士が世界のどこにいても、どんな時にも支え合えるように。世界から県系人が集うこの時期に願いを込めたい。