<金口木舌>生かしてこその教訓


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 「痛い、痛い」。患者の耐え難い叫びが病名の語源となった。イタイイタイ病はカドミウムが体内に蓄積し、腎臓をむしばむ。その症状を伝える証言がある。「息を吸うとき、針千本か二千本で刺すように痛いがです」

▼富山市の神通川流域で大正時代から発生し、解決をみたのは1972年。裁判で住民勝訴に至るまで気が遠くなるような歳月を要した
▼その教訓を伝えるイタイイタイ病資料館に「公害防止協定書」の展示があった。住民らが必要に応じ立ち入り調査する記載がある。72年以降、毎年行っているという
▼米軍基地への立ち入り調査が容易ではない県内の有機フッ素化合物(PFAS)の問題との落差に驚く。人体への有害性が指摘され「公害」とも言えようが、米軍へ及び腰の政府の対応は残念でならない
▼イタイイタイ病を語り継ぐ青木有明さん(100)の母も病に苦しんだ。「人間の命が第一と企業の社長が徹していたら被害は食い止められた」。国内企業と米軍、対象は違えど、生かしてこその教訓を、再び悔いに変えてはいけない。