<金口木舌>「推し」も人間


社会
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 「推し」のアイドルに街中でばったり会ってしまったらどうすべきか。平尾アウリさんの漫画「推しが武道館いってくれたら死ぬ」でオタクの主人公は「お金出してないのに会話なんてできない」と遠慮してしまう

▼オタクはライブ会場で購入したCDの特典券を使い、制限時間の範囲内でアイドルと会話する。相手を推す喜びと消費する後ろめたさで葛藤する姿が描かれる
▼矢野経済研究所がまとめた分野別のオタク人口推計で1位はアニメオタクの約685万人。アイドルは約361万人で4位だったが、年間消費額は1人当たり9万3704円で最多だった
▼好きな存在を表す言葉「推し」は定着し辞書にも掲載される。一方でSNSでの誹謗(ひぼう)中傷など、推しの対極に「アンチ」がある問題もある。応援の度合いを金銭的な消費の多寡で競う傾向も加速する
▼好きな存在を傷つけてしまっては元も子もない。のめり込むだけでなく、遠慮や思いやりも必要だ。忘れてはならないのはステージや画面の向こうにいるのも生身の人間だということだ。