<金口木舌>モロッコへの「判官びいき」


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 映画史に残る傑作「カサブランカ」の作中、酒場で愛国的な民謡を歌うドイツ軍人に対抗し、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を合唱する場面がある

▼ナチスに対し、人々が自由を歌い上げる感動的な一幕だ。しかし、なぜ北アフリカのモロッコでフランス国歌なのか。製作された1942年当時、モロッコはフランスの保護領という名の植民地だった
▼戦略上の要衝だったモロッコは、15世紀以降ポルトガルやスペインの侵攻を受け、1912年には大部分がフランスの保護領となった。56年に独立を果たすが、その後も独裁的な王制下でクーデター未遂が起こるなど、不安定な情勢が続いた
▼ワールドカップで躍進を続けるモロッコ代表は、くしくもスペイン、ポルトガルを下し、準決勝でフランスと対戦する。この紙面が届くころには結果も出ていよう
▼代表メンバーにはフランスのクラブチームに所属する選手も多い。サッカーに歴史の因縁を持ち込むのが無粋とは承知している。ただ、ほんの少し判官びいきが入ってしまうのもまた人情だろう。