<金口木舌>あなたは私


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「情けは人の為ならず」とは意味合いが少し違うかもしれないが、胸を打たれる場面に遭遇した。宜野湾市社会福祉協議会が実施する視覚障がいのある人たちに代わり書物や新聞を読み上げる「音訳ボランティア」養成講座でのこと

▼受講者の約3割は自身が目を患った経験があったり、聴覚障がいがあったりする人だった。「いつかは自分がボランティアの人に世話になるかもしれないから、今のうちにできることがしたい」と話していた
▼33歳の上地世羅さんは片耳の聴覚障がいがあるが、コロナ下でのマスク生活で話し相手の口元が見えず、聞き取りが難しくなった。「見えない人も困っているだろう。見える私が何かしたい」と思い至り、受講を申し込んだ
▼自らも助けを必要とする場面で他者への助けにも思いをはせる想像力に驚く。講習を終えた受講者はボランティアの現場に入るが、社協によるとボランティアの数はまだ足りない
▼「あなたは私、いつかは私も」。そんな視点で物事を見ると、社会の支え合い力が強まるかもしれない。