<金口木舌>伝記の力


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 世界的に流行した新型コロナウイルスが確認され3年になる。未知のウイルスとして猛威を振るい、ワクチンや新薬の開発が進んだ

▼1796年、英国の医師ジェンナーが牛痘に感染した女性のうみを少年に接種した。少年に今度は天然痘患者のうみを接種したが、免疫ができていたため発病せずに済んだ
▼この予防法で天然痘は根絶された。フランスの細菌学者パスツールはその予防法を「ワクチン」と名付け、研究を開始。狂犬病や炭そ病などのワクチンの開発に成功した
▼「自分も細菌学者になりたい」。世界保健機関(WHO)などで感染症の研究や対策に取り組んだウイルス研究の権威、根路銘国昭さん(83)は少年時代、パスツールの伝記を読んで胸を膨らませた
▼今日はパスツール生誕200年。名護市の根路銘生物資源研究所で副反応のない万能ワクチンの開発に取り組み、国際学術誌に論文を掲載した根路銘さんは「新型コロナにも応用できる」と自負する。「目標を達成する秘訣は絶対に諦めないこと」。パスツールの言葉は生き続ける。