<金口木舌>うちなー英語と万次郎


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 「トゥーナーとメリケン粉買ってきなさい」。祖母から習った英語の発音が通用しないことは学生時代に県外出身の人と会話した時に知った

▼戦後のアメリカ世で、県民は耳から聞こえてきた音を吸収し発音したのだろう。高齢者たちの発音に、積極性の高さを垣間見る
▼水はウオーターではなく「ワラ」。坂本龍馬や三菱財閥創業者の岩崎弥太郎らに影響を与えたジョン万次郎が考案したカタカナ表記は、おばあたち同様、英語を耳から習得した発音だ
▼江戸末期に漁船で遭難中に米捕鯨船に救助され、米国で航海術や造船技術などを学んだ万次郎は沖縄にも縁がある。1853年に那覇港に入港したペリーに琉球王府の通訳として面会した牧志朝忠は、万次郎を取り調べていた
▼万次郎から聞いた米初代大統領ワシントンの実績などを語り、牧志はペリーを驚かせた。172年前の旧暦1月3日、万次郎は糸満・大度海岸に上陸した。激動の時代に語学や海外事情を積極的に吸収した先人たちと、戦中戦後を生き抜いた沖縄の高齢者の姿が重なる。