<金口木舌>「琉球競馬」をもう失わせない


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 速さでなく走りの美しさを競う。沖縄に根付く「非武の文化」を体現したような琉球競馬(ウマハラシー)が消滅したのも、戦争がきっかけだ

▼1917年に適用された馬匹(ばひつ)去勢法で軍馬に適した大型馬を生産するため、小型の在来馬が駆逐された。馬の頭数がそろわず、琉球競馬は各地で消滅していった。沖縄随一の松並木と言われた宜野湾馬場は戦後、米軍普天間飛行場の滑走路と化した
▼庶民の娯楽となる以前は、琉球王府で役割を果たした。右と左の前後脚を同時に繰り出す足並み「側対歩(そくたいほ)」は、冊封使節団を送迎する際に落馬しないよう訓練された。外交立国だった琉球ならではだ
▼琉球競馬が復活したのは10年前。沖縄こどもの国やスポニチ競馬専門記者の梅崎晴光さんが文献や証言を調べ上げて再現した。22日には節目を迎える琉球競馬が同園で開かれる
▼ロシアのウクライナ侵攻、中国の海洋進出、対抗して進む日米による沖縄の軍備増強。暗黒の歴史が繰り返しそうな今、優雅に駆ける琉球在来馬の姿が見たい。もうこの文化を失うまい。