<金口木舌>本から考える平和


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 第2次大戦中の独ソ戦を舞台にした小説「同志少女よ、敵を撃て」にターニャという看護師が登場する。家族を皆殺しにされながらも「戦うか、死ぬか」という2択に取り込まれず、敵味方を問わず治療した

▼作者の逢坂冬馬さんは、戦争には「敗北者しかいない」と語る。ターニャの「みんなが私みたいな考え方だったら戦争は起きなかった」とのせりふに「理想を投影した」という
▼戦場の悲劇には逢坂さんの反戦の思いが込められている。原点には海軍の軍人だった祖父の戦争体験があるという
▼この本は書店員が選ぶ「沖縄書店大賞」で昨年、小説部門の大賞を受けた。沖縄での贈呈式で逢坂さんは「いつか沖縄を題材に書いてみたい」と語っていた。ウクライナの戦乱に終わりが見えないまま1年がたち、次の沖縄書店大賞の季節になった
▼賞には小説、絵本のほか沖縄部門もある。候補作には歴史、文化や本土との関係性を考えさせられる本もある。書店員の熱意がこもったポップを見ながら、沖縄の歴史や戦争と平和について考える。