<金口木舌>社会は人が変えていく


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 今年のアカデミー賞最多7部門で受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。好き嫌いは分かれよう。怒濤(どとう)の悪ノリが続くのに、ラストには不思議な感動を覚えた

▼アジア人初の主演女優賞に輝いたマレーシア人のミシェル・ヨーさんは、オスカー像を手にして言った。「今夜、われわれはガラスの天井を破った。私のカンフーでね」
▼古い映画を思い出す。1967年の「招かれざる客」。63年に黒人初の主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエ氏演じる医師が、恋に落ちた若い白人女性とともに彼女の実家を訪れ両親と結婚について話し合う
▼米国ではいくつかの州で法的に異人種間の結婚が禁じられていたが、67年に連邦最高裁は違憲と判断した。娘から「筋金入りのリベラル」と評される父でも苦悩する姿に、差別を乗り越えることの難しさと必要性を感じた
▼昔に比べれば少しずつ多様性が認められるようになってはきたが、社会は勝手に変わるのではない。いつだって、人の強い思いが社会を変えていく。