<金口木舌>壕が伝える教訓


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 本部町のキンキンムイ(健堅の森)で戦時中、朝鮮半島出身者らの部隊が掘ったとされる壕に入った。奥行き約30メートル、高さ約2メートル。崩れつつあるが、坑木が残る

▼町には荷役の朝鮮人労働者もいた。友利哲夫さん(89)は彼らの疲れ切った姿を目にした。「道にバタバタ横たわっている。日本兵が来ては軍靴で蹴っ飛ばし、血が出て泣く人もいる」
▼物乞いの歌も耳にした。「民家のおばさん芋ちょうだい 2、3本分けてくださいね 本当にすみません」。口ずさみ、友利さんは涙を浮かべる。「実にかわいそう。これが人間に対する扱いか」
▼長野にも虐げられた人々がいた。松代大本営地下壕。戦争末期、大本営は天皇中心の国家体制を守るため、本土決戦を準備。朝鮮人労働者を酷使して建設を進め、その間、沖縄を時間稼ぎの防波堤にした
▼玉城デニー知事は沖縄戦を指揮した第32軍司令部壕の保存・公開に向け長野との連携も模索する。なぜ無謀な戦争の末に命を奪われなければならなかったか。沖縄と長野、その教訓を共に見つめる。