<金口木舌>言いふらしたい秘密


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 この時期の楽しみがある。魅力を言いふらしたい衝動と、値段が上がらないよう秘密にしたい気持ちが共存する。沖縄近海で捕れた本マグロが格安で食べられることだ

▼うるま市の「うるマルシェ」で先日遭遇したのは生本マグロの刺身。大人2人が「刺身定食」で食べられる量が1300円だった
▼複雑な心境になるのは漁業担当の頃に県漁連の人に聞いた話。沖縄は生マグロの一大産地だが、流通コストや購買力の弱さから売値が低い。「こんな上物、本土なら倍の値段だよ」と悔しがっていた
▼新興国の経済力拡大でマグロの引き合いは強まり、乱獲も進んだ。豊漁期の大部分が残るが、県は今年も資源管理のために本マグロ漁の停止命令を出した。売値は低く、捕る量も制限されれば、海人(うみんちゅ)には泣きっ面に蜂だ
▼こんないい物を安値で売ってはもったいない。大型連休前後の旅行シーズンを挟み、消費欲の高い観光客も訪れる時期。あまり知られていない「マグロ産地」をブランド化したい。あの味がこっそり安く食べられないと悔しいけれど。