<金口木舌>LGBT法、誰のため?


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 少数者を理解し、「不当な差別」も許しません。ただ、多数者の国民のことも大事です。そのために政府が必要な指針を作ることもあります

▼16日に成立したLGBT理解増進法12条の内容を簡単に言えばこうなる。同条項は「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」とうたう。少数者に配慮しているようで、結局は多数者の「安心」のための法律と言えよう
▼「訴訟が乱発される」「公共トイレや浴場での女性の安全が脅かされる」「活動家に利用される」。風刺劇や不条理劇のせりふではない。いずれも法案審議中の自民党議員の言葉だ。彼らの目に差別に苦しむ少数者の姿は映らなかったか
▼理解でなく、むしろ差別増進法だと当事者は落胆する。多数者の許す範囲内でしか少数者の権利は認められない。厳しい見方かもしれないが、これが法律の本質であろう
▼審議を重ねるに連れ、法律の内容は後退した。最後は三つの法案が並び、与野党の妥協で可決成立。置いてけぼりを食ったのは誰か。「本末転倒」の四字が頭に浮かぶ。