<金口木舌>台湾と沖縄


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 台湾と沖縄。近いけれど互いの歴史をどれだけ知っているだろう。2010年、台湾に招待された県平和祈念資料館、ひめゆり平和祈念資料館、佐喜眞美術館の3館長の共通した思いではなかったか

▼館長らを招いたのは、現在、国家人権博物館でボランティアをしている蔡焜霖さん。国民党政権が住民を武力弾圧した1947年の「2・28事件」の証言者だ。台湾社会でタブーとされてきた事件が語られ始めたのは最近のこと
▼戦争と戦後の冷戦構造がなければ、台湾の人々がこのような苦難に置かれることはなかった。基地を抱える沖縄も同じ。ひめゆりの普天間朝佳館長は「命や人権が蹂躙(じゅうりん)されてきた戦後史だった」と語る
▼中等学校生が動員され、「天皇のため」に犠牲を強いられた歴史も共通する。佐喜眞道夫館長は実感を込める。「国家が人権の上に価値を持っていくのが国体論。その末に戦争が起きた。命や人権を深く考えることが大事だ」
▼語り継ぎ、問うことは楽ではないが、その作業を止めることはできない。次の戦争を防ぐためにも。